平成2008年1月7日 日本教育新聞掲載 記事
「倉敷発 日本製」の拠点!
人間が「主」、機械は「従」一着一着心を込めて・・・
-学校の工場見学も受け入れ-
- 「誠実」と「信頼」を基盤とした企業活動を目指す-。1865年(慶応年間)に創業。1944(昭和19)年に『制服メーカー』としてスタートを切って以来、「衣料文化の向上」をモットーに”一針一心”品質第一主義で「制服=スクールユニフォーム」を手がけてきた明石被服興業。「生徒が自信に満ち溢れ胸を張って着用し、自らの『心』を豊かに育てることができる制服=スクールユニフォームを創造する」-という同社一丸となった強い思いを実践していくための規範が、冒頭の「誠実」と「信頼」だったという。こうしたなかで、国内生産体制の整備を図り、他社とは一線を画す「倉敷発 日本製」を打ち出し、邁進している同社の「制服=スクールユニフォーム」の今後とは?同社の河合秀文社長へのインタビュー、実際の生産現場=宇部工場と制服改定を行った学校への実践取材を通じて探ってみた。
88m×40mの鉄筋造2階建てで述床面積7040㎡。中にはコンピュータ制御のハイテク縫製機器をはじめ、CAD(自動マーキングシステム)・CAM(自動裁断システム)といった最先端のシステムがズラリと並ぶ・・・。山口県宇部市にある明石被服興業の「宇部工場」だ。「2001年にリニューアルされた明石被服興業の基幹工場で、全国でもトップクラスの縫製工場として注目を集めています」自信に満ちた表情でこう説明するのは冨金原 通宏・生産本部長兼宇部工場長だ。ここで手がけているのは主に中学校・高等学校向けの男女の制服。「12月~3月にかけての繁忙期には、日産1,900点。年間には約500,000点もの制服を作ることができます。ここが「倉敷発 日本製」の拠点だと強調する。
◆環境・人に優しい工場
同時に最先端の機器・設備だけではなく、環境に優しい工場でもあるという。「例えば夜間電力を利用してその熱で空調を賄う氷蓄熱式空調システム(エコアイス)、重油にかわって大気汚染に対して負担の少ないLPガス設備、緑地の散水や消化用水などに使う節水のための中水設備などを積極的に導入。さらには完全バリアフリーなど人に優しい工場も目指しています」
それでは実際に宇部工場の生産ラインを見ていこうー。
◆「宣言」=社員の意識
まず目に入ってくるのが一階の入り口付近に掲げてある「私達の宣言」だ。①私達は国内生産を標榜し「日本製」の高品質・高付加価値の製品をお客様に提供します。②私達は日本製の学校制服を通じて子どもたちの健やかな成長と学校教育のさらなる発展に寄与すべく努力します。③私達は優れた日本の生産技術や伝統技術を守り、次世代に継承します-「これは私達社員の意識を表したもの。毎朝これを読み返して、日々決意を新たにしているのです」
◆裁断後は自動で搬送
いざラインに入ると1階の奥には、生地1700種類を常時ストックしている設備が・・・。必要に応じて本社から送られてくる「製造指図書」をもとに、CAD部門が作成した情報に沿って、ここから裁断ラインへと生地が送られていく。「生地は重いですからエアーフローティングシステムによって、空気で浮かせながらCAM工程へと続きます。ここでは6台の高速、高性能の自動裁断機を設置、厚さ最大50㎜までの重ねた生地をカットすることができます。また、カット速度も分速35mにおよびます」カットされた生地と必要となるブランドネームやファスナーなどの副資材は、自動搬送機で2階へと送られる。
◆糸を切るにも心遣い
縫製工程で待っているのは、181セットのスウェーデン製ハンガーシステム=「イートンシステム」。ちょうどハンガーに吊るした様な状態で縫製を行っていくので、型崩れがしにくいという特徴を持つ。「制服の1着1着は生徒さん1人1人と同じです。『できるだけシワなどでないように』との思いからこのシステムを導入したのです。さらには製品送り作業が自動化できたことで、タイトなスケジュールでも納期管理がしやすくなりました。
またボタンなどの副資材は、それこそ”一針一心”手で縫いつけていく。「作業を終えて糸を切る際に、通常は何を使うと思いますか?誰もが『ハサミ』と答えるものではないでしょうか。しかしここではヒーターの熱でカットしていきます。なぜならハサミで切ると糸がよれてばらける可能性があるからです。でも熱ですと糸先が固まりますから、ばらける心配はありませんから・・・・・・」
◆針は?厳しい検査が
その後は検査。「縫製段階で100%、仕上げ段階で100%の"計200%"の体制で厳しくチェックします。といってもOKが出て終わりではありません。その後は身体を傷つける可能性のある危険な針などの金属が混ざっていないか、検針機にかけて漏らさずチェック。合格品は襟・袖、左右の前身・背身に丁寧にアイロンをかけて『倉敷発 日本製』などのラベル類をつけ、1着1着心を込めて折りたたんで箱に入れます。
◆個々の”技能”を磨く
これが宇部工場のラインだが、このような冨金原工場長の説明で気づくのが、システムはもちろんのだが働く人たちの1着に込める気遣い=「心」のあり方だ。「例えば縫製ラインにおいては設計図にあたる、原材料や縫い方、寸法などが記された『縫製仕様書』だけが頼りです。社員はこれを瞬時に読み取って作業に入っていきます。なぜなら1人1人の社員が『技術+能力』=技能を持っているからです。その意味で宇部工場では、システムに全面的に頼るのではなく、1人1人の社員が"技術者″としての自覚を持ち、それプラスα=心を加味して創り上げていくのです」
2004年からはさらに加えて「Q(クオリティー=質)アップ活動」も開始した。2ヶ月に1度CAD・裁断・縫製・仕上げといった全工程で正しい作業がなされているか-。細部に至るまで徹底チェック。結果を集計して報告会を実施し、問題があれば原因を探って解決を目指していく。
◆99点は落第の赤点!
こうした人間が主、機械が従という意識こそが高品質・高付加価値の製品づくりにつながると冨金原工場長。「制服づくりというのは1着でも見落としがあると、それを着用する生徒さんにとっては0点。ですから試験で99点を取ったら非常に優秀ですが(笑)、私たちにとっては落第点なのです。その100点を常に取れるようにするために必要なのが『人間』。今後ともより精進し、よりよい制服づくりに邁進していきたいと思っています」と続ける。
なお、この宇部工場では、校外学習の一環として工場見学も受け入れている。自分たちが日頃着用している制服がどのようにつくられているのかー。ぜひ1度見学したいものだ。

