2006年1月2日 日本教育新聞掲載 記事
「誠心・誠意」を堅持して 一歩一歩”王道”を歩む
- 前社長の河合正照会長は、昭和61年に「美意識と品位に包まれた青春時代を送ってほしい」-との願いを込めて「制服革命」を提唱。二年後にはその精神を具現化する制服=学校服の”プレタポルテ(高級既製服)”「ハナエ モリ スクールジェンヌ」を発表して一大センセーションを巻き起こしました。
河合 確かにそれまでは「生徒指導の手立て」と考えられていた制服=学校服に対して、新たに「生徒が主役」という”哲学”を織り込んだわけですから業界はもとより教育界からも大変な注目を集めました。制服=学校服というのは生徒が主役となり、着用することで生徒一人ひとりの個性=「心」を育んでいく・・・・・・。
この想いから打ち出したのが「制服革命」であり「ハナエ・モリスクールジェンヌ」だったのです。しかしそれまた、企業として歴史的な大転換を図った、会長の”大英断”でもあったわけです。
■会社の命運をかけて「制服革命」を提唱■
-といいますのは?
河合 それまでの明石被服興業はどちらかといいますとみなさんもご承知のブランド=「富士ヨット」の男子学生服の扱いが全体の7~8割のシェアを占め、女子の制服=学校服はほとんど取り扱っていなかったも同然だったのです。これは何を意味するのかといいますと、制服=学校服の”教育衣料”には①男子衣料②女子衣料③体育衣料という三分野があってそれぞれ独自に生産・企画・販売を行っています。そして販売の要となる流通ルートはまったく異なっているのです。
-つまり、社内で生産・企画まで行ったとしても、流通ルートがないということは・・・。
河合 そうです。社として流通ルートを持っていないということは売れない。売ろうとすれば一から、いやゼロから開拓しなければならないということなのです。いくら哲学を織り込んだよい制服=学校服でも、流通ルートがなければ、”宝の持腐れ”。企業としては非常に大きなリスクを抱えることになります。そんな状況にもかかわらず会長はあえて決断。社員を鼓舞し全員で一丸となって突き進んでいったのです。
この時の会長の選択は、制服=学校服に理念や哲学を持たせたという画期的な意味合いだけでなく、制服メーカーとしての社の発展もしっかりと見据えた歴史的な決断=”大英断”だったのです。
■ 男子、女子、体育と学校衣料を総合的に ■
-なるほど。その意味では一昨年にスポーツウェアメーカー・㈱デサントとライセンス契約し「2005。体操着を変える。/2005。体操着が変わる。」をコンセプトに「安心と安全」を追求として体育衣料=スクールスポーツウェアの発表も、「ハナエ・モリ スクールジェンヌ」と同様の意味を持っているのですね。
河合 ええ。これまで当社の体育衣料は男子衣料の流通ルートを使って販売していましたが、今回のスクールスポーツウェアは独自のルートを開拓して販売。その意味では同じといえるでしょうね。
-ところで「制服革命」以来、河合正照会長のリーダーシップによって、明石被服興業は次々と新しい試みにチャレンジしてきました。
■ 新ブランド以外にも「心の豊かさ」理念に ■
河合 そうですね。ブランドでいいますと1992年には”聡明な紺”をキャッチフレーズとする素材を使った、英国調のブリティッシュスタイルが基調の「スクールプレタ」。2002年には洋服の本場=イタリアのモデリストが型紙作成から縫製までを一貫して行うことで着心地を徹底的に追求した「ヴェルマティーノ」などを発表していきました。また学校と直接話し合って、1校1校の教育理念や教育目標を丹念に織り込んでいく独自ブランド「カレッジエース(男子)」た「ハーズハート(女子)」も手掛けました。
-その他にもこうしたブランドだけでなく制服=学校服に込める新たな理念・哲学も提唱してきました。
河合 21世紀が始まる直前の2000年には新たな理念=「スクールコミュニケーション」を提唱しました。これは当時専務であった私と現在の会長が額と額を寄せ合って考えに考え抜いて到達したものです。つまり「人と人とのつながりを促す制服=学校服」の追求です。いわゆる人と人とのつながりを通じて「心の豊かさを育てる」という理念です。
-こうしたこれまで会長が牽引してきた方向性を集約しますと、「生徒が主役」をまず念頭に置いて、彼らの「心」の豊かさを育んでいくために「『一針一心』真心を込めて縫う」・・・。常にそのような人間味溢れる制服=学校服を提供していくというものだと思いますが・・・。
■ 現場を肌で感じる就任以来、全国行脚 ■
河合 社長に就任してまず私が実行したのが何だと思いますか?会長がこれまで手掛けてきたことを現場で直接肌で感じ取ろうと、実は全国行脚をしたのです。
-人間味を現場で知る・・・。
河合 5ヶ月間で全国47都道府県中30府県をまわるという過密スケジュール(笑)でしたが行ってみて本当によかったです。15、16年前に「ハナエ・モリ スクールジェンヌ」を採用い頂いた学校から「もう長年着用しているが、飽きが来ないどころではなく、地域の方々から『近隣の学校で最高の制服』という高い評価を今でも頂いている」といわれました。本当にうれしかったですね。
-なるほど。ものづくりを行う立場としてはうれしいでしょうね。
河合 やはり品質を重視して良いものを提供しようと、経済性を度外視して「国産」にこだわり制服=学校服の1着1着に愛情を込めたものづくりをしていますから本当にうれしいですね。例えば制服=学校服の1着は、年間に何万着もつくっている私たちメーカーから見れば「One of them」。しかし生徒さん一人ひとりにとってはかけがえのない一着です。その視点でものづくりを行うには、どうしても制服=学校服に対する想いを知っている日本人による国内生産が必要です。そこまで気を遣ってつくっている私たち明石被服興業の社員にとって、そうした学校の声は”勲章”と同じで本当にうれしいですね。
-それと明石被服興業はただ新ブランドを発表し理念や哲学を提唱するだけでなく、それを定着化させるための努力もしていますね。
■着こなしセミナーで制服に自信と愛着が■
河合 ええ。当社の制服=学校服の採用校に対しては、定期的にデザイナーを派遣してメンテナンスも含めた「着こなしセミナー」を実施しています。制服=学校服が手間隙掛けて作られているのか・・・・・?終了後には自分たちの制服にプライドを持つようになり、受講した生徒さんからは「制服を着用する本当の意味が初めてわかった」「苦労して作られた制服であることを知って愛着が湧いた」-などの手紙も寄せられています。
-なるほど。制服=学校服を通じた「教育」ですね。意味深いことだと思います。ところで今後とも会長が切り開いた道を踏襲していくのでしょうか?
河合 ええ。それこそが制服=学校制服を手掛ける教育メーカーとしての「王道」です。「商売だから売れればよい」-という発想は制服=学校服メーカーには絶対に馴染みません。その意味からも私は会長が切り拓いてきた道=「王道」を、「誠実」という衣を纏って社員と共に手を携えて一丸となって歩んでいきたいと思います。そして学校とも一緒の歩調で歩み共に考えながら、「『一針一心』真心を織り込んでいく」・・・・・・。それこそが制服=学校服メーカーとしての誇りであり矜持だと考えています。
-なるほど。本日は有難うございました。

