2005年1月7日 日本教育新聞掲載 記事
紡ぐのはスクールコミュニケーション
「一針一心」真心を込めて・・・
-明石被服興業では21世紀が始まる直前(2000年)に、新たな理念「スクールコミュニケーション」を打ち出しました。
河合 ええ、私と専務で考えをまとめたものです。
-どのような理念なのでしょう。
河合 制服=スクールユニフォームが持つ意味の変遷を考えてみてください。戦前は一億総「統制のためのアイテム」、終戦後は戦後民主主義教育を体現する「平等性実現のためのアイテム」、さらに80年代半ば以降からは私が「制服革命」で提唱した”スクールアイデンティティ”を指向する「差別化のためのアイテム」へと変化してきました。ではその次の段階にはどのような概念が重要になってくるのだろうか?・・・・・・考え抜いた結果到達したのが「コミュニケーションとしてのアイテム」でした。
■心が通い合う制服を
-具体的には?
河合 ひと言で表現しますと「教育コミュニケーション環境の活性化を支援する制服=スクールユニフォーム」。「人と人」とのつながりを促す制服=スクールユニフォームです。例えば、「仲間の間で話題をつくりだすことのできる制服」「知的でメッセージ性のある制服」「学校の姿勢を魅力的に表現する制服」「着る人の自尊心を象徴的に表現する制服」「着る者がそれぞれの個性を発信できる余地のある制服」、さらにつけ加えると「環境共生のような教材になりうる制服」もそうです。
-それは常々社長が標榜している「『心』の豊かさを育てる」という信念と通じていますね。
河合 ええ、”衣食足りて礼節を知る”という諺がありますが現在はまるで正反対。物質的に豊かになってくるのと反比例して、精神的な貧しさを感じさせる出来事が増えてきています。例えば、学級崩壊やいじめなど教育現場の問題から、少年犯罪の凶悪化などなど・・・。大人たちはただただ憂うばかりです。しかしその根源には何があるのか。あえて指摘すると「心」と「心」のコミュニケーションの不足です。教師と生徒、生徒と生徒、さらには親と子どもも・・・。こうした現状に制服=スクールユニフォームが何か貢献できないものか、そう考えて打ち出した概念ですから、当然「『心』の豊かさを育てる」という私の信念と共通しています。
■「私達の宣言」高らかに
-それと河合社長は「国産」にこだわっていますね。
河合 バブル崩壊後に低価格志向が強まり、多くの企業が中国など海外生産に走りました。しかし制服=スクールユニフォームは「日本固有の文化」。海外生産には馴染みません。そこで2001年にあえて基幹工場である「宇部工場」をリニューアル。最先端のハイテク縫製機器を装備すると同時に省エネルギー設備も完備。”環境型縫製工場”として、現在フル稼働しています。
-国内生産の製品を提唱する、「私達の宣言」も出されたようですね。
河合 ええ、①私達は国内生産を標榜し「日本製」の高品質・高付加価値の製品を提供します。②私達は日本製の学校制服を通じて子ども達の健やかな成長と学校教育の更なる発展に寄与すべく努力します③私達は優れた日本の生産技術や伝統技術を守り、次世代に継承します。との3つからなっています。また、製品には、「倉敷発 日本製」というラベルを添付しています。同時に顧客が必要な制服=スクールユニフォームや小物を、入学時期にまとめて箱詰配送できるように、物流機能を強化した「新物流センター」も整備しました。
■心をつなぐ新ブランド
-なるほど。ところで新ブランドも発表していますね。
河合 そう、昨年6月に、デザイナー畠山巧氏の標準型ブランド学生服=「T・H・D LA MAISON ACADMIQUE(テ・アシュ・デ ラメゾン アカデミック)」に、学校別に提案できる「ALLER EN CLASSE(アレアンクラス=フランス語で「学校へ行きましょう」)という新ブランドを加えました。小学校から高等学校までの一貫教育の進展をにらんだもので、詰襟型というった伝統的なものや色使いやデザインが個性的なもブレザータイプのものなど、シャツやニットも含めて約五百点取り揃えています。
-これも・・・。
河合 もちろん「宇部工場」で製造する、国内生産です。これを着用することで「生徒さんに楽しく学校へ行ってもらいたい」。そんな願いを込めたブランドで、今後は学生衣料の中心的存在として育てていくつもりです。
■「安心と安全」をテーマに
-スポーツウェアも手がけました。
河合 昨年の秋にスポーツウェアメーカー・㈱デサントとライセンス契約を締結し、「安心と安全」をテーマとしたスポーツウェアを発表しました。これも国内=「宇部工場」に特注の縫製機を導入して対応しています。
■女子スラックス一括導入も
河合 自転車通学対策と冬の防寒対策という2つの側面で、従来から要望が強かったことから、本格的に導入しました。キーワードはずばり「健康」。冬などに寒さで素足が赤黒くなっている女子高生を良く見かけますが、あれは健康に良くないと思います。彼女たちの健康に考慮した制服=スクールユニフォームを提供しようというのが導入理由です。長野県のある公立中学校がその趣旨を理解してくださり、全員購入に踏み切っています。
■心温まるメッセージが
河合 ユニセフ支援は、学生服を対象にしたもので、購入した生徒さんや保護者が衣装箱の中に同梱されている専用の応募ハガキを投函すると一通につき五百円が日本ユニセフ協会に寄付されるというものです。投函する際には自分で切手代を負担しなければならないにも関わらず、これまでに数多くの応募がありました。その一枚一枚に「援助を必要とする国・人はいっぱいいます。少しでも協力できればと思っています」「困っている人を助ける人こそ人間だと思う。僕もできることなら自分でも五百円を寄付したい」(いずれも中学一年生)といったメッセージが書かれています。
-これまで伺ったすべてから、「『心』の豊かさを育てたい」という熱い思いが伝わってきます。
河合 私の”哲学”は「『一針一心』真心を込めて・・・」というものです。「スクールコミュニケーション」「国内生産」。すべてが「子供達の『心』を豊かに育む」うことを目指して打ち出したものです。こうした姿勢は決して一過性のものではありませんし、私だけでなく社員の日常行動指針でもあります。『一針一心』真心を織り込みながら出来上がった制服=スクールユニフォームを提供する・・・これこそが明石被服興業の真髄なのです。
-なるほど。本日はありがとうございました。

